鄭淵潔はなぜ、知的財産権保護の苦境に陥ったか?

童話大王と称えられる鄭淵潔氏は先日、個人の SNS アカウントで、商標権保護活動を停止すると同時に、今後、 如何なる作品を発表しないことを表明した。同氏によると、673 件の商標権侵害事件に対し、権利を保護することが 実現できなかった。その微博内容から見ると、筆者は鄭淵潔氏の一部の知的財産権に関する保護理念に偏りが 存在する可能性があると感じた。法律は実際に同氏に多くの保護を与えているが、知的財産権の保護には相対性 があるので、むしろ、怒りを収め、笑いとばしたほう良いであろう。
2023-07-07 15:53:44

童話大王と称えられる鄭淵潔氏は先日、個人の SNS アカウントで、商標権保護活動を停止すると同時に、今後、 如何なる作品を発表しないことを表明した。同氏によると、673 件の商標権侵害事件に対し、権利を保護することが 実現できなかった。その微博内容から見ると、筆者は鄭淵潔氏の一部の知的財産権に関する保護理念に偏りが 存在する可能性があると感じた。法律は実際に同氏に多くの保護を与えているが、知的財産権の保護には相対性 があるので、むしろ、怒りを収め、笑いとばしたほう良いであろう。


下記は、小さい時から「舒克と貝塔」の愛読者として、鄭淵潔先生へのアドバイスである。筆者の経験に基づくと、 権利者が権利保護の苦境に陥った原因は、法律及び法規の設定、権利者自身の知的財産権への認識、先駆登 録の氾濫という三つの事由が挙げられる。それらの事由は鄭淵潔氏の権利保護紛争事件にも適用する。


全世界での商標登録は、使用優先原則と申請優先原則の二種類に分けられる。出願優先原則を実施する国は 商標名称に対し、通常、先に商標を出願した者を登録者とする。先に関連商標を使用した場合には、先使用者は 出願者に対し、異議又は無効を申し立てることができる。


使用優先原則を実施する国は、商標を出願する際、商標の使用記録が存在し、使用証拠を提出することを要求し ている。使用優先原則は、商標の先駆登録を打撃することに有効であるが、商標管理機関と裁判所への要求が非 常に高い。全世界で、そのような勇気のある国は極めて少ないである。例えば、米国。その他の殆どの国は、例え ば、先進国の EU、日本、イギリスでさえ、使用優先原則を実施していない。


中国では、権利者が自分の商標が先駆登録されたことを発見した場合、その商標に対し異議を申し立てることが できる。商標管理機関と裁判所は審査する際、先に使用された商標の知名度と保護範囲について、知名度が高く 保護範囲が関連商標区分の商品とサービスに限られることを要求している。例えば、鄭淵潔氏が創作した童話の キャラクター「舒克」が、他人に商標として出願された場合、鄭淵潔氏は作品の創造者として、先駆登録された商 標に対し、異議又は無効を申し立てることができる。商標局又は商標審査委員会に、当該商標出願がその先行権


利を侵害したことを認定することを申請し、商標出願を却下する又は無効と判定することを要求することができる。 然しながら、このような裁判は必ず、勝てるわけではない。


なぜならば、次の 2 つのハードルをクリエする必要がある。まず、先行権利に対応する名称又はブランドは、一定 の知名度を有する必要がある。次に、名称の保護範囲は関連商標区分に限られる。鄭淵潔氏が「舒克」商標の異 議又は無効の訴訟を提起ならば、その知名度への立証には問題ないであろう。当該作品は発表期間が長く、影 響力も大きいので、知名度の要件を満たしていると考えられる。次に、全世界の商品及びサービスは 45 の商標区 分に分けられる。其々の商標区分には、数百から数千の商品及びサービスの商標登録が可能となっている。先駆 登録された名称に対し、「商標法」は関連する商標区分のみを保護することとなっており、通常では、全ての商標 区分に保護を与えない。


例えば、「舒克」は有名な童話のキャラクターであるが、関連商標区分は通常、子どもに関連する生活必需品、例 えば、衣類、玩具、食品等に限られる。然しながら、床塗料のような建材製品、コンプレッサーのバルプのような機 械製品に商標出願した場合、権利保護を拡張することは非常に難しい。商標局、商標審査委員会及び裁判所は そのような権利保護主張を認めないことが多い。


「舒克」のような知名度のある名称は鄭淵潔氏が創造したものである。他人がこの名称を建材又は机械に商標出 願することは不適切であり、なぜ、法律は鄭淵潔を保護しないのかという疑問を持つ読者がいる。それには、2 つ 目の理由がある。まず、知的財産権の本質とは何なのか?知的財産権は人為的に設定した権利であり、イノベー ションを促すために、社会がパブリックドメインの中から保護区を作り、創作者を保護しているということである。創作 者を保護することは、その他の人の自由を制限するということでもあり、その保護範囲を広くすると、その他の人が 更に制限されていることを意味する。


鄭淵潔氏の微博を見て、筆者は同氏が権利保護するために、闘争する勇気と行働を賞賛するが、その一部の観 点が必ずしも合理的ではなく、権利を過度に主張した可能性があると感じている。例えば、数千万の閲覧数のあっ たドイツの 100%出資の「舒克(上海)管路設備サービス有限公司」の権利侵害を告発する投稿 が挙げられる。


事件概要:「舒克(上海)管路設備サービス有限会社」は、ドイツの SCHUCK 会社の 100%出資の子会社である。そ の名称の中の「舒克」はドイツの親会社 SCHUCK の訳名である。鄭淵潔氏は、その作品のキャラクターの舒克の 知名度を考慮し、ドイツ SCHUCK 会社の名称を翻訳する時、「舒克」を回避し、他の訳名を選択することができる。


例えば、「樹克」、「樹可」、「束可」、「薛克」、「沙客」、「術克、」「術柯」、「術殻」等が挙げられる。同社は会社名称 を「舒克」と命名し、鄭淵潔の創作した有名なキャラクター「舒克」の権利を侵害した恐れがある。


筆者は、会社名称、つまりブランドへの司法保護原則は、商標法と類似しており、鄭淵潔氏が「舒克」を管路設備 の会社名称に使用することがその先行権利を侵害したと主張することは、法律で通じないと考えている。「舒克」は 童話の中のキャラクターであり、当該名称が、子供に関連する生活必需品として、保護されることは合理的である。 然しながら、機械系の配管設備製品までに拡大すると、社会全体が譲渡する利益が大きすぎる。この領域におい ては、他人に自由を与えるべきである。配管設備会社は、中国語の会社名称を翻訳する際、童話のキャラクター 名称を回避する義務がない。


上記の判例から見ると、鄭淵潔氏の権利主張は必ずしも、法律の支持を得られるとは限らないが、知的財産権の 従事者として筆者は、有名作家が商標保護の苦境に陥ることは確かに同情に値すると認めざるをえない。中国の 知的財産権の発展過程から見ると、中国の知的財産権への保護はその経済発展段階と一致しており、21 世紀前 半の 10 年間においては、知的財産権への保護が経済発展に追いついていない。


当時、中国の商標出願審査は、それほど厳しくではなく、先行権利への立証義務要求が比較的に高いである。鄭 淵潔氏のような先権利者は先駆登録された際に、自分の権利を取り戻すことは往々にして非常に困難である。容 易に不正利益を得ることによって、間接的に先駆登録の氾濫を助長し、悪意的な先駆登録者への取り締まりが不 足している。幸いに、ここ 10 年来、中国は、ブランド保護を含む各種の知的財産権保護法律と政策を調整し続け、 権利者の権利保護の利便化を図り、先駆登録への取り締まりに力を入れている。知的財産権への保護状況以前 より、大幅に改善されている。


最後に、作家は、自分の作品をわが子のように愛しく思っており、他人に悪意的に商標出願されることは、作品へ の冒涜であり、作家が怒りを感じ、法律を武器に権利保護を主張することは理解できる。然しながら、知的財産権 はあくまでも、社会全体が創造者に譲渡した権利であり、自己権利を保護する際に、知的財産権に相対性がある ことを考慮する必要がある。