株式によるインセンティブ・プランを実施する際に、有限会社を設立し、当該プランを実行するプラットフォームとするスキームを採用することは、益々、広がっている。従業員が利益を享受すると同時に、継続的且つ忠実に職務を遂行することを確保するために、パートナーシップ協議において、勤務会社と労働関係が存在することをパートナーの資格(株式インセンティブ資格)を得る条件の一つとしており、勤務企業との労働契約を解除すれば、「当然脱退」となる。然しながら、「労働契約の解除」には異なる情状がある。協議による解除、労働者による一方的な契約解除の場合では、労働関係解除の客観的事実が比較的に明確であり、パートナー資格の喪失が容易に認められる。一方、使用者によって、労働契約を解除した際、特に使用者が違法に労働関係を解除した場合、従業員のパートナーの資格は喪失することになる?法曹界はこのことに関する意見が分かれており、類似事件に対し、裁判所によって異なる認定がなされている。
一部の裁判所は、会社が違法に労働契約を解除しても、「当然脱退」(株式インセンティブを受ける資格の喪失)になると判定している。
広州市中等裁判所が審理した広州鑫而行持分投資パートナーシップ会社(有限パートナーシップ会社)と兰世华との労働紛争事件(事件番号:[2018] 粤01民終7204号)において、一審裁判所は、既存の有効判決が兰世华と五舟社の労働関係が違法に解除されたと認定したので、労働法における当然脱退規定を適用できないとして、鑫而行企業による当然脱退の確認請求を棄却した。二審において、広州中等裁判所は鑫而行社は、五舟社が社員に対する株式インセンティブを実施するプラットフォームであり、関連パートナーシップ契約に、パートナー脱退の解決方法について定めておらず、兰世华が既に、五舟社と労働関係を解除され、五舟社の社員ではないので、鑫而行社の株式インセンティブ・プランの実施対象でなくなり、鑫而行社から退出する必要があり、兰世华が、五舟社に労働関係を違法解除されたことによって被った損失は、別途、解決すべきであると判定した。
東莞中等裁判所が審理した陆小春と东莞市博啓投資パートナー会社(有限パートーナ会社)、誉銘新社等との紛争事件の二審裁判において、(事件番号:「2019」 粤19民終第16635号)」陆小春は誉銘新社による労働契約の違法解除に対し、労働仲裁を申請したので、法廷審理を中止し、労働仲裁が下された後、再び事件を審理することを請求した。東莞中等裁判所は、『誉銘新社の「社員株式管理方法」は、株式報酬プランを適用する従業員が、会社の実質的支配者以外の誉銘新会社と労働関係を締結した者を指すと定めている。然しながら、誉銘新社が2019年1月30日に、陆小春との労働関係を解除した。双方の労働関係が引き続き履行することができず、陆小春は同社の株式報酬プランの実施対象ではないとして、陆小春の全ての請求を棄却する判決を下した。
裁判所が労働契約が違法解除されたと認定した場合、当然脱退(株式インセンティブを受ける資格の喪失)と判定しない場合もある。済南中等裁判所が審理した冯波等と福運社との労働紛争事件の二審裁判(事件番号:[2020]魯01民終第9505号)において、「当事者の冯波は东阿鎮社が一方的に労働契約を解除した行為に対し、労働仲裁を提起したので、冯波のパートーナの資格問題について、まだ最終的な結論がないとして、パートーナの資格が喪失したと認定できず、福運社による冯波のパートーナ資格喪失の請求を棄却した。
株式インセンティブは人材を誘致するために特別に与えた経済的権力である。通常では、役員及びコア社員等の人的信頼関係を高く求める職務に付与される。会社より一方的に労働契約を解除された場合、労使双方の関係が完全に破裂し、人的信頼関係の基盤を失い、労働契約の履行を続ける可能性はほとんどないので、法理上から見れば、株式インセンティブを実行する必要性がなくなった。筆者は、広州中等裁判所と東莞中等裁判所の観点を支持するが、済南中等裁判所のような判決も存在するので、関連紛争を回避するために、株式インセンティブ・プラン又はパートナーシップ契約を締結する際に、次のように明確に定める必要があろう:労使双方が協議して労働契約を解除する場合には、従業員は、労働契約を解除した日から当然脱退する。会社が一方的に労働契約を解除した場合、労使双方が労働関係について、如何なる紛争が発生しても、従業員は労働契約解除の通知を受けた日から、当然脱退する。