株主会決議がなくても利益分配を求めることができる~金氏と上海JL社との利益剰余金配当に関する紛争事件を基に~

2017年9月1日に施行された最高裁「<中国会社法>若干問題に関する規定(四)」(以下、「会社法司法解釈四」)は、「株主が具体的な利益分配案を明記していない株主会による決議又は株主大会による決議を提出し、会社に対し利益分配を請求する場合、裁判所は、その訴訟請求を却下する必要がある。但し、法律規定に違反し株主権利を濫用して利益分配を行わず、その他の株主に損失を生じさせる場合を除くとする」と規定している。
作者:柏立团
2020-01-20 15:58:04

2017年9月1日に施行された最高裁「<中国会社法>若干問題に関する規定(四)」(以下、「会社法司法解釈四」)は、「株主が具体的な利益分配案を明記していない株主会による決議又は株主大会による決議を提出し、会社に対し利益分配を請求する場合、裁判所は、その訴訟請求を却下する必要がある。但し、法律規定に違反し株主権利を濫用して利益分配を行わず、その他の株主に損失を生じさせる場合を除くとする」と規定している。つまり、利益分配に関する株主会決議がない状況下で、通常では、株主による利益分配請求を却下することになり、当該請求を支持することは例外とされている。

会社法司法解釈四が発布された二か月後、2017年11月、我々は株主による利益分配に関する紛争事件を手掛けた。当該事件において、我々は、原告として、利益分配に関する株主会決議を提出できなかったが、多数の確たる証拠を通じて、最終的に、当事者の訴訟目的を達成した。


事件概要

被告である上海JL社は1998年2月18日に設立された会社である。その登録資本500万元であり、13名株主の内、原告の金氏の出資比率は14.78%であり、他方、大株主の姚氏の出資比率は40.84%である。姚氏は被告上海JL会社の執行董事、法定代表者、支配株主及び実質的支配者である。

2014年3月11日、上海市のある会計士事務所は被告の上海JL社の依頼を受け、「専門項目審査報告」を発行した。報告によると、2013年3月31日まで、被告会社の財務諸表における未払配当は13,943,547.27人民元である。原告は出資比率に基づき、2,060,856.29人民元の配当金を受け取れるとして、原告の金氏は筆者に依頼して、裁判所に、上記の配当金の支払いを求める訴訟を提起した。


争議焦点

本件争議の焦点:上海JL社には利益分配に関する株主会決議が存在するのか?存在しない場合、上海JT社は、原告の金氏に配当金を支払う必要があるか?

1、利益分配に関する株主決議が存在するのか?

企業会計準則によれば、「未払配当金」は株主大会又は類似機構の決議によって合意された利益分配案に基づき、投資者に分配する現金配当又は利益である。「未払配当金」との勘定科目には、企業が確定又は宣告したが、実際に支払っていない现金配当又は利益を計上する。当該勘定科目の期末の貸方残高は、企業の未払いの現金配当又は利益を表示している。

利益分配に関する株主会決議がなければ、上海JL社の貸借対照表の「未払配当金」の貸方に1300万元以上の残高が存在すること不可能であろう。当該残高が、上海JL社の株主への負債である。利益分配請求権が普通債権に転じるので、民法上の債務関連規定を適用することになる。そのような場合には、株主会決議を提出しなくても、原告はその持分に基づき、配当金を受け取ることができる。

2、原告の金氏に配当金を支払うべきであるか?

「専門項目審査報告」によると、法定代表者の姚氏は幾度も、支配株主、法定代表者の身分を利用して、株主権利を濫用し、原告及びその他の株主に損失を生じさせた。1、2006年10月から2012年7月、被告口座にある資金15,335,299.29元を不正に流用し、そのコントロールしているA社の口座に移転した。2、2009年9月から2013年1月、被告口座にある資金28,087,000元を不正に流用し、その支配する会社B社(現在の所、C社に改名した)口座に移転した。3、2004年6月から2011年12月まで、被告口座にある資金13,552,687.04元を不正に流用し、その支配する会社D社の口座に移転した。4、2008年12月から2013年1月まで、被告口座にある資金8,500,000元を不正に流用し、その個人の所有する口座に移転した。上記の各社は姚氏個人が投資した会社であり、被告の関連会社ではない。会社法司法解釈四の規定に基づくと、原告の訴訟請求は支持されるべきである。


審理結果

本件の訴訟対策を講じるためには、会社法と会計学の両方の知識に熟知する必要がある。当時、最高裁による会社法司法解釈四が発布されたばかりであり、我々は司法解釈四第十五条の但し書きの部分を巡り、多数の確たる証拠を提出した。法廷審理から見れば、これらの証拠によって、裁判官に当方に有利な心証を形成させ、被告の自信を徐々に失わせることに繋がり、最終的に、被告が原告に配当金を支払い、原告が訴訟を撤回することとなった。


関連思考

利益余剰金配当を巡る紛争において、利益分配を請求する株主が具体的な配当案を記入した株主会或は株主大会決議を提出できないとしても、会社が法律規定に違反して、株主権利を濫用し利益を分配していない場合、その訴訟請求を支持することができる。司法実践において、下記の事由に該当する場合には、利益分配の請求を支持することができる。

1、会社に任職する株主或はその指定された者に、会社規模、営業業績を逸脱して同業他社の給料水準より明らかに高い給料を支払い、間接的に当該株主に利益を配当した。

2、経営と関連しないサ―ビス又は財産を購入し、株主に消費又は使用させ、間接的に利益を配当した場合

3、利益を配当させないために会社利益を隠す又は移転した場合。

本件において、支配株主姚氏はその他の株主の同意を得ずに、大量の資金をその関連会社に移転した。実質上、株主権利を濫用して、不正に自身に利益分配したので、会社法司法解釈四の第十五条に定められている分配要件に合致していると考えられる。